天才エンジニアが考えるテクノロジーに必要なものとは
Iddris Sanduさんを招待したHEAPSマガジン主催のイベントに参加してきたので、共有したいと思います。
今日はこのイベントでカルチャー×テックを目撃してきます。
— 金子幸三郎 (@Kosaburo_Kaneko) 2019年12月1日
【アイドリス・サンドゥ】
13歳でグーグルのインターンを経験。15歳でツイッターのデータ解析、16歳でインスタグラムへアルゴリズムを提供、18歳を過ぎる頃には、ウーバーやスナップチャットのコンサルを歴任https://t.co/q8KHkNOz4R
他にも以下のような豪華な方々がスピーカーとして登壇されていました。
GROOVE X CEO 林要さん
LOVOTという小さなロボットを作っている会社のCEOされてます。LOVOT、本当にかわいくて人間がロボットにここまで感情を持てるものかと、なんか不思議な気持ちでした。
Iddris Sanduさんの通訳の方に気を使ってゆっくり喋っていたのが好印象でした。普段からゆっくりだったらごめんなさい。
『ハイパーハードボイルドグルメリポート』ディレクター 上出遼平さん
Netflixで絶賛配信中のグルメ番組(という入り口を準備してるだけの超ハードコアなやつ)を作ってらっしゃいます。失礼ながら見たことなかったんですが、今からNetflix加入したいと思います。
Placy Founder 鈴木綜真さん
音楽の趣向で場所を見つけるアプリを提供されています。なんとなく普段接しているエンジニアに一番近くて話聞いててなんか安心しました。おしゃれでした。
Editorial JETSET 古賀 詩穂子さん
「あんた本屋なんか儲けんからやめとき」と言われながら本屋を作ってらっしゃいます。古賀さんが作ってるフリーマガジン読ませてもらいましたが、ひさびさにこんなに手触り感があって熱量があるものに触れました。
マジでUXやデザインに興味のあるエンジニアは絶対参加した方が良かったと言い切れるぐらい良いイベントで、既存の枠組みからはみ出すということがテック領域にまだまだ足りてないということを気付かされました。
Iddris Sanduとは
Iddris Sanduさんはガーナに生まれて今はLAに住んでいて、冒頭で紹介した通り完全に天才ですが、そう呼ばれるのは嫌いらしい。彼はなぜ自分のことをCultural Archtectと呼ぶのか、という話を皮切りにカルチャー × テックのお話をこのイベントでしてくれました。
HEAPSマガジンのインタビュー記事があるので、詳しく知りたい人はぜひ読んでみてください。
辞書で“アーキテクト”という言葉を調べると「建物を建てる人」のほかに「アイデアの構想を生み出す人」だったり「想像を実際のかたちにする人」とあるんだ。俺は、何かを作り出して、それを多くの人が利用できるように民主化していく。
デザインとは
彼の中で「デザイン」の定義とは、「デバイスと、そのデバイスとの関係性の全体構成」で、例えばソフトウェア + ハードウェア + ユーザーがデザインの領域に入ると説明してました。
UXと言った時にソフトウェアやユーザーだけを考えると片手落ちで、そのユーザーが何のデバイスで使っているのか、場所はどこなのか、などコンテキストを幅広く理解しないと的を得ないものが出来上がってしまって結局使われないという失敗例はよくあると思います。
面白かったのはその関係性という表現で、例えば手を洗っているときに自分は蛇口と関係性を築いていて、自分は蛇口を尊重し、蛇口は自分を尊重している、そんな感覚を私たちに伝えてくれました。リアルとデジタルを融合するのではなく、お互いがお互いをリスペクトしながら関係を結ぶことができると信じている、とも言っていました。
リアルとデジタルの融合という表現はよく聞きますが、テクノロジーがリアルが担ってたものを駆逐するわけじゃなく、かといってリアルがテクノロジーを排除するわけでもなく、実際はお互いがアイデンティティを保ちつつ、お互いを尊重して関係性を築く、未来はそんな形になっていくのかなと思いました。
テックの立ち位置
テクノロジーがどういう立ち位置であるべきか、という話でめちゃくちゃ良い表現だなと思ったのが「テクノロジーはストーリーの最初と最後にあるべきではなく、何かを編んでいるときに入っていく糸のようにあるべきだ」というフレーズでした。
つまり最先端のテクノロジーを使いたいからプロダクトを作る、というのは物語の最初にテクノロジーがあるので共感を得られない。一方、この課題を解決したいという強い意志を持ち、それを実現する手段としてテクノロジーを活用する、というのがあるべき姿だと言っていて、常にテクノロジーはツールでしかないという点を強調してました。
クリエイティビティの源泉
「日本とアフリカは竹の再利用をやっているという共通点があるんだ」というイントロから始まった話が興味深くて、モノやツールの終わりというものは人間が決めるものではない、人間が恣意的にこのタイミングから先は使えないとか、そう決めたところで終わるような話じゃないと言ってました。
そこで僕に刺さったのが「クリエイティビティは制限されたところから生まれる」という発言でした。つまり何かを発明するときは、それを発明するための全ての要素やツールが揃っているから発明されるわけではなく、制限の中でどう突破するかを試行錯誤するから生まれるんだと理解しました。もっとこのモノを使っていくにはどうすればいいのか、足りない中でどうしたらもっと良くできるのか、そう考えることが創造に繋がるんだなと感じました。
イベントに対して
本当に良いイベントで、エンジニアの方にぜひ参加して欲しいなとすごく思いました。いわゆるテック系のイベントってLTがあって、ピザとビールがあって、もくもく会するとかそんな感じだと思いますが、まるっっきり違いました。
会場はおしゃれで居心地が良くて、オーガニックティーやビールの販売があって(どれもエグいぐらいおしゃれ)、登壇者とオーディエンスの距離が物理的にも心理的にも近く、インタラクティブなイベントにするための設計がされているんだろうなという印象を受けました。
会場着いたけど、今まで参加したテック系イベント(もしこれがテック系イベントに分類されるとしたら)の中で一番おしゃれ pic.twitter.com/1ZH5tcxq8b
— 金子幸三郎 (@Kosaburo_Kaneko) 2019年12月1日
テックとカルチャーを混ぜるという点が登壇者や構成にも現れていて、一部はテック寄り、二部はカルチャー寄りといった構成でしたが、両方を通して共有できるポイントがあって、そこが領域を越えたコラボレーションのヒントになっていて、それを気づかせられるような良いイベントでした。
補足するとテックテックしたイベントはつまんないっていう意味じゃないですよ。ただ領域を越えて、枠からはみ出して、コラボレーションを生むようなイベントがもっとあっても良いんじゃないかなと感じました。
まだまだテックって孤立していて他の領域と交われてないところが存分にあると思います。そのボーダーを溶かしていけるようにアクションを起こしたいなと思いました。
余談
コミュニティっていう単語を今後もっと聞くようになると思った。仕事とか家族のコミュニティとは違うコミュニティが形成されて、そこで遊んだり何かプロジェクトを一緒にやったりするようになる未来が来るのかなと。キングコングの西野さんがやってるオンラインサロンとか箕輪編集室に近いものがどんどん出て来る動きが加速しそう。